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diary

ベスト8の試合をプレイバック①

 PKを止められても、王者は止まらなかった。
正直に言うと、キックオフ前は少しだけモロッコに肩入れしていた。2022年カタール大会の準決勝であの粘り強い守備でスペインとポルトガルを打ち破ってベスト4まで駆け上がった「アトラスの獅子たち」。
あの興奮をもう一度見たくて、今回の再戦を心待ちにしていたファンはたぶん自分だけじゃないと思う。

7月9日 日本時間だと10日の朝。舞台はボストン・スタジアム。因縁の一戦は期待を裏切らず、それ以上の緊張感で始まった。立ち上がりからフランスがボールを握る。「まあ当然だろうな。」とは思っていた。
デンベレ、オリーズ、エムバペ。攻撃陣の顔ぶれだけ見ても世界屈指だ。でもモロッコは崩れなかった。コンパクトな守備ブロックを保ち、ヤシン・ブヌが最後の砦として体を張り続ける。ああ、このチームまた何かやってのけるんじゃないか?と思わせる時間がしばらく続いた。

28分フランスのカウンターからエムバペが倒されてPKを獲得する。「ここで決まるな」と正直思った。世界最高のストライカーの一人が目の前にゴールがある状況だ。

でもブヌが止めた。VARの確認まで挟んでからのキックだったのに、GKは正面でしっかり止めてみせた。あの瞬間スタジアムの空気が変わったのが画面越しでも伝わってきた。ブヌを取り囲むモロッコの選手たちの表情。ああいうのがワールドカップの醍醐味なんだと思う。0-0で折り返した前半はスコア以上の激闘だった。

後半に入ってもフランスの圧力は続く。そして60分デジレ・ドゥエからパスを受けたエムバペが、ペナルティエリア手前から右足を一閃。DFの脇を抜く鋭いシュートがゴール右隅に突き刺さった。PKを止められた男が流れの中できっちり仕事をする。「このメンタルの強さこそ彼がこの世代を代表するストライカーである理由なんだろうな」とあらためて思わされた。

66分今度はエムバペのラストパスからデンベレが追加点。ここでほぼ勝負あり。終盤もモロッコに決定機を許さず、フランスは2-0の完封勝利でベスト4進出を決めた。

試合内容だけならフランスの完勝と言っていい。でも自分がこの試合で一番心を動かされたのは、実はスコアじゃなかった。PKを止められても下を向かず、キャプテンとしてチームを引っ張り続けたエムバペの姿。そして最後まで一点でも取り返そうと体を投げ出し続けたモロッコの選手たち。勝者にも敗者にもそれぞれ本物のドラマがあった。

デシャン監督の試合後のコメントも印象に残っている。PK失敗があったことは認めつつ、「我々はまさに望んでいた場所にいる」と語り、3大会連続の準決勝進出について「大きな山を一つ越えた」と振り返ったらしい。この落ち着きというか、大舞台での場慣れ感こそ、今のフランス代表の強さの正体なんだと思う。

これでフランスは3大会連続のベスト4進出。前回大会は決勝でアルゼンチンに敗れているだけに、今大会にはリベンジの意味合いも強い。準決勝の相手はベルギーとスペインの勝者で、どちらが来ても簡単ではないはずだ。

一方のモロッコは大会を去ることになったけれど、堅守を武器に強豪を苦しめ続けたこの戦いぶりは、間違いなく今大会のハイライトの一つとして記憶に残るはずだ。

準々決勝はまだ終わっていない。ノルウェー対イングランド、アルゼンチン対スイス。これから待つ試合にも、今回のような息を呑む展開が待っているんじゃないかと、今から楽しみで仕方がない。

猪股義人先生

この記事を書いた人

猪股義人先生

知多半島出身で学生時代から塾講師を始めて以来、塾業界一筋。「児童・生徒さんや保護者様お一人ひとりに対して全力で向き合う」をモットーに、自分自身も一緒に成長していけるよう妥協せずに最善の道を見つけ出す。どんな些細な悩み事でもかまいません。お気軽にご相談ください。
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